ぬるまゆにつかってすごす日々

あしゅら男爵

昨年のいくつかのエントリで取り上げた、中原利郎先生の過労死に関する民事裁判の控訴審判決が出ました。

医師の過労死、損害賠償請求を棄却−東京高裁
「部長代行としての職責から、問題解決に腐心し、見過ごすことのできない心理的負荷を受けたというべき」
「主として、99年3月以降の過重な勤務、加えて、常勤医の減少などによって大きな心理的負荷を受け、これらを原因とした睡眠障害または睡眠不足の増悪とも相まって、うつ病を発症したというべき」


と過重な業務とうつ病発症、自殺との因果関係を認めたものの

「過重な勤務であっても、病院側が、中原さんの疲労や心理的負荷などを過度に蓄積させて、心身の健康を損なうことを具体的客観的に予見することはできなかった」


などと残念ながら、病院の管理責任は認められませんでした。

中原先生が命を絶たれた翌年。

労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関する基準について
とい通達がだされています。
また、2004年には過重労働・メンタルヘルス対策の在り方に係る検討会報告書という報告書が出されています。

提示したこれらの通達は、確かに中原先生が命を絶たれた後に出されたものですが、あくまでも、法的根拠は労働基準法などの労働法です。
雇用者である病院に管理義務があるのは明らかだと思います。
医療業界が労働法を守っていては成り立たない業界になってしまっていることも認めます。
その責任は厚労省にあります。

医療業界は厚労省に二重に管理されている業界です。厚生部門では、労働法では守りきれない過重な勤務を求め、一方労働部門はそれを形式的に取り締まる。

厚労省は統合失調を起こしてしまった省庁といえるでしょう。
Permalinkコメント:(0)トラックバック:(0)|21:49

割り箸事故民事訴訟判決-報道に思う

今日、東京地裁で杏林大学割り箸事故の民事訴訟があり、原告敗訴の判決が出た。医療従事者の立場から言えば当然の判決だ。

以下引用
加藤裁判長は、これまでに報告のない症例▽神経障害などの症状が見られなかった▽折れた割りばし片が口の中で確認困難だった−などの理由から、「当時の医療水準や受傷状況から、割りばしが脳を損傷させた可能性は診断できなかった」と指摘し、根本医師の過失を否定した。
 その上で、隼三ちゃんの死因について「割りばしが刺さったことが原因だが、具体的な仕組みは不明」と判断。「適切な診察や治療を行ったとしても、延命の可能性は認められない」と結論付けた。

「診察に過失ない」 刑事裁判と逆の判断 割りばしで園児死亡事故よりーー>魚拓
この第一報の後
「息子にかける言葉ない」 割りばし死亡事故訴訟で両親ーー>魚拓
医療過誤の立証なお壁高く 割りばし事故訴訟ーー>魚拓
と産経新聞は続報を出し続けている。他の新聞社と比較して、異常なほどの執念深さだ。ご丁寧に無罪、無過失の判決が出ても「医療過誤」の扱いだ

さて、刑事訴訟での地裁判決に引き続き、被告側の勝訴となったわけだが、刑事訴訟での無罪判決の際、産経新聞はどのような主張をしただろうか?
いまだにネット上には産経新聞のコメントが残されている。

産経抄 2006.3.30 より
―――-
医師と患者の関係は、神と僕(しもべ)のようなものだといった友人がいる。わが身を医師の手に委ね、神の啓示を待つよりほかにない。救急車で運ばれた患者なら、医師を選ぶことすらできない。その担当医の治療が適切でなかったらどうなるか。
▼薬の過剰投与、延命治療の停止など、信じがたい医療事件が次々に巷(ちまた)を襲う。そして救急医療の未熟である。割りばしがノドに刺さって四歳男児が死亡した事故では、東京地裁が当直医を無罪とした。判決は医師の過失を糾弾しながら、死亡との因果関係は認めなかった。
▼一家の不運は六年八カ月前の夏に起こる。東京都杉並区で杉野隼三ちゃんが転倒し、くわえていた綿菓子の割りばしがノドに刺さった。二重の不運は、駆け込んだ杏林大学付属病院の当直医が耳鼻咽喉(いんこう)科医だったことだ。彼は薬を塗るだけで帰宅させ、隼三ちゃんは翌日死亡した。
▼確かに救急医療の現場では、医師の過重労働の現実がある。長時間の手術を終えて帰宅し、ビールを飲もうとした瞬間の呼び出しなど茶飯事だろう。イスラエルで起きた医師のストでは、やむなく重症患者の治療だけに限ったら、死亡率が低下したという例がある。
▼今回の無罪判決では、「診察を怠った過失はあった」と当直医を糾弾した。その上で、脳神経外科に引き継がれても「救命の可能性は低かった」と述べた。山崎豊子の『白い巨塔』で、がん患者の執刀医、財前五郎に下された判決に似ている。財前の処置は不誠実としながら、一審は因果関係から無罪になる。
▼東京地裁の法廷でも、医師の有罪を願った遺族の思いは届かなかった。だが、判決文にある当直医に対する断罪は、法的には無罪でも中身は“有罪”のそれに等しい。

判決後も続いた、マスコミスクラム(当時はこの言葉を知らなかったが)に驚いた記憶がある。今回の判決に対する産経新聞の反応も尋常ではない。普段、専門外のニュースではあまり気にしていなかったことだが、裁判の判決が出た後でも、あたかも自らの意見、主張が真実だと言わんばかりのマスコミの態度に違和感を憶える。

「どうして息子が死んだのか、ただ知りたいだけ」
この事故で、亡くなったお子さんのご冥福をお祈りする次第だが、母親の問に対する答えは出たように思う。

この類い希な事故に関わってしまった医師の不運を思い、そもそも何故事故が起きたかの検証と常識的、良心的な今後の報道を望む。
Permalinkコメント:(0)トラックバック:(0)|21:20

致命的疾患

昨日、奈良大淀の妊婦死亡事例の民事裁判の口頭弁論が行われました。
僻地の産科医先生が傍聴され、エントリ 奈良大淀病院の裁判! その2007/08されていらっしゃいます。

”その病気の専門科にかかれば、治らない病気はない”
そう思っている方が多いということを再認識させられました。

大淀の事例では、母体は救命できない病態だったが、奇跡的に、胎児を助けることが出来た。

それが、医師の多くが考えている真実でしょう。
しかし、裁判は真実を求める場所ではないのだそうです。

最近、外来でも
人間はいつか死ぬんだよ。
病気は治らないんだよ。
日本人の半分は癌になるんだよ。
と、話をすることが増えてきました。
Permalinkコメント:(0)トラックバック:(0)|11:21

大淀病院産科医師を支持します

今日は奈良大淀の妊婦死亡事例の民事裁判
損害賠償請求事件 平成19年(ワ)第5886号 の口頭弁論第二回が行われたそうです。
また詳細はわかりませんが、奈良ひいては日本の産科医療を守るべく、大淀病院産科医師を応援致します。

そして、今日この日に、何故このような悪意に満ちた記事が書かれるのでしょうか?
病院たらい回し:妊婦衝突事故後に流産 救急搬送中 大阪 (魚拓)
深夜2時過ぎに受け入れ先が決まらない、というのは大淀の件でもそうでしたし、奈良県の周産期医療の現状を反映しているのでしょう。しかし、この妊婦さんは妊娠20週くらいとされ、妊娠も自覚していました。それなのに、まだ産科にかかっていないとは、どういうことでしょうか?
妊婦さんご自身の問題かも知れません、もしくは、奈良ではすでに、産科にかかりたくても産科が見つからない状況になっているのかも知れないな...
などと考えてしまいました。奈良の周産期をそこまで破壊したのは誰だったでしょうね。そして、この悪意に満ちた記事を署名無しで書き散らす、新聞社の姿勢に疑問を感じます。
Permalinkコメント:(0)トラックバック:(0)|20:35

裁判の整合性って

小児科医師中原利郎先生の過労死認定を支援する会のHPによると、先日のエントリで話題にさせて頂いた、行政裁判とは別の民事裁判で、原告敗訴の判決が出たようです。
「裁判所は立正佼成会付属佼成病院の安全配慮義務違反を認めず、原告側の請求を棄却しました!」
行政裁判では、過労死であるとの判決が確定しています。
しかし、医師を過労に追いやったのは誰か?医師の労働環境を整える義務を負うのは誰か?
それは「雇用者」ではないのです。

サンデー山口WEB版
ここに、「当直しかいない夜間にどっと患者が診察に訪れ、もともと医師の数が少ない小児科医は交代することもできず、通常の何倍もの負担がかかってしまいます。」という一文が載せられています。

医師を過労死に追いやったのは、患者なのでしょうか?
Permalinkコメント:(0)トラックバック:(0)|22:16

我々は労働者だ

過労の末自ら命を絶たれた医師、中原利郎先生の死を労災と認定する裁判の判決が出ました。
画期的といえる判決です。
医師の労災、過労死といえば
関西医科大学研修医の故森大仁さんの過労死事件が有名です。
この時の、関西医科大学が、残したコメント
「研修医は労働者とはいえない」
というのは、日本の医学教育、医師の労働環境の貧しさを象徴するものでした。

時は流れ、
今回の判決で
我々医師も労働者の仲間入り出来そうです

毎年自ら命を絶つ、多くの医師達のご冥福をお祈りするとともに
我々の労働環境が改善し、私を含む、医師達がこの悲劇を繰り返さないことを願います

亡くなられた中原先生の遺書です


国が控訴しないように働きかける署名運動の文章です。
印刷して葉書に貼付し発送して頂ければと思います。
http://www5f.biglobe.ne.jp/~nakahara/youseihagaki.pdf
普段、政治的活動は行わないことにしておりますが、日本の医療を守るための大切な判決を確定したいと思います。
Permalinkコメント:(0)トラックバック:(0)|20:20
プロフィール

Author:こんた
コメントは殆どがアダルト関係ばかりですので、コメントとトラパは承認制としています。

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